渦巻きは広がり続ける

鵺的『奇想の前提』
無事に終演いたしました。

たくさんのご来場、ほんとうにありがとうございました。

大冒険を終え、眠りについたものの
なんだか眠りは浅く

眠ったり覚めたりを繰り返しており
未だあの世界の幻の中にいるようです。

渇望することを渇望していたために
身体中が渇ききっているようで

内側から、外側から
栄養をここぞとばかりに吸収しております。

菰田燦子という女性を舞台の上に立ち起こす日々は
途方もなく孤独な戦いで
カラカラと虚しい音がなって
しかし同時に、溢れ出る泉のようなものの豊かさを感じました。

燦子に幾重にも感情のレイヤーがあったように
わたしにも無数の感情が湧きいでました。

相反するものの狭間を行き来することでうまれる
曖昧で確かなものを求め続けた日々でした。

こんなにも揺らぎ続け、磨り減ることも朽ちることもなく
15回もの公演をおこなうことができたことに

個人的には大きな喜びを感じております。

初めてこの作品を台本で読んだときに抱いた
大きなやさしさにつつまれるような
すべて許されたような心地。

壮大で、荒唐無稽にも思えるその作品に
ゆたかにふくまれたそのやさしい度量を
高木登さんの希望の形を
どうにかして見てくださる方にも感じて欲しいと常々思っておりました。

そうして作り出す日々。
演出の寺十吾さんは、その本にあるすべてをすくいとるように
言語を全身で信頼しながら、言語の隙間にあるすべてをすいだすように
生きたひとりひとりの中に渦巻くものをみちびきだしてくださりました。

本番に入ってからは、日々その一人一人の渦が
交わったり離れたり絡まり合い
なんどやっても新たな思いが芽生えました。

脚本、演出、
美術、音楽、音響、照明、
舞台から見えない場所での仕事
そしてそのすべてを背負って立つ役者の一人一人を心から信じさせていただき
おかげで、たくさんの挑戦ができました。

見えなかった地へ足を踏み入れることができました。

『奇想の前提』というおもちゃの
骨の髄まで、しゃぶり、遊び尽くさせてもらえました。

そしてその戦を、激しい照明と音響を怒涛の物語を
客席で受け止めてくださった一人一人に
何よりの感謝をお伝えしたい思いです。

見たことのない場所へ行くには
見ていてくださる人がいるということが
どれだけ心の支えになるかということ
改めて実感する日々でした。

そしてこれからも、
果てなき探求を、冒険をし続けてゆこうと
おもえた日々でした。

どうにかして
どうにもならないこの心の中の渦を
その瞬間の結晶として
はなってゆこうとおもいます。

あらためまして、
本当にありがとうございました。