おなじめせんで

この記録が終わってしまうことに気がついて

この記録が終わったらこの旅が終わってしまうように感じて

ううん、旅はとうに終わっているんだけど
この記録が終わったって旅は終わらないんだけれど。



なんにもしないで
いろんなじかんをすごした。

ほとんどみちくさをくっていただけ。

でもわたしには一番大切な時間。

それを知らない地で過ごせて
いつもは入らない、たどりつかない
思考の路地へ行けたりもした。

いまだったなあ、とおもった。

たくさんのことを、おもった。





好きなものが良く浮かんだ。

今年は好きなものが良く浮かんだ。

コントラストのある時間が
好きなものを浮き立たせた。

白い景色に包まれて
そのことをよく感じた。

ここは、とても、好きな場所。



みちくさをくいすぎて
うまい、ってかんじの空気をくいすぎて

北海道らしい食事なんて
ほんと、しそびれていた。

あせって空港で、海鮮丼を食べた。


この一食にすべてを込めて
豪勢なのにした。
かにもいくらも、いる。

ため息ものに美味しかった。

とくによかったのは
いつもはわたしのスタメンに入らない海老。

海老ってこんなに美味しかったっけ。

雲丹は、あきらめてたべそこなった。

雲の上の存在。雲丹。



おなかもいっぱいになって
北海道の大地から、浮かんで離れた。

夜の便だった。

空のなかで見る星ってどんなだっけ、と思いながら
離陸した。

しばらく経つと
地面が遠くなって
雲を越えた。

機内の光に反射した窓の奥に
小さく光が見えた。

わたしは窓に張り付いて
その光を見た。

星だ。

膝の上にかけていた大きなマフラーを窓にかぶせて
反射を防いで
そこにもぐりこんだ。

するとそこには
いっぱいの星空があった。

わたし、はじめて
空のなかで星を見た。

星と同じ目線で
星を見た。

いつも見上げている星空が
ちゃんと90°ちがって
真横から見える。

星と並ぶと
星になれたみたいでとてもとても嬉しくて

人目も気にせずかじりついて見た。


夢中ってことばがよくにあう。
そんな時間は

少し実感したことのないくらい
一瞬で過ぎ去った。

あっというまに
星は雲の上の存在になった。



すこしさみしかったけれど
一瞬でたくさんを蓄えたから

からだじゅうが星空みたいで

たくさん煌めかせながら家路に着いた。

帰り道も、とても一瞬に感じた。


家の近くに来ると
いつもあいさつする近所の猫
勝手に金ちゃんと呼んでいるその子が

するりとちかづいてきて

わたしの足をすりすりと
なんどもすりぬけては
みゃむみゃむと、はなしかけてきた。

何分間も、そうして
みゃむみゃむと。

こんなことはじめてで
とてもうれしかったから
わたしもわたしのことばで
今日の日のことをはなした。

まとっていた北海道の空気が、
美味しかったのかな。

それとも森のなかで野生に帰りすぎて、
同じにおいがしたのかな。

旅が終わっても
これからの日々の旅のなかでわたし

猫に同じ目線ではなしかけてもらえるわたしでいようって
そうおもった。