君の名前で僕を呼んで

だれかをとてもいいとおもえたとき

じぶんのことがいままでよりずっといいとおもえることもあれば

じぶんのことがいままでよりずっとみにくくおもえることも、ある。

その両極に引き裂かれるようなおもいも

なによりも、そのだれかをみつめることでしかすくえないおもいも

尊いものだとおもう。

映画『君の名前で僕を呼んで』をみた。

17歳の青年が、24歳の男性に出会い、
生涯忘れられない恋をする物語。

人を愛することは、とてつもなくかなしいとおもうことがある。

その理由はわたしにもよくわからなくて

衝動的にかなしい。

その青い痛みが、映像の中にはっきりとうつっていて

すこしめまいがするほどだった。

生きているうちに

ことばの通じる
心の通じる誰かに出会えることは

本当に貴重なことだとおもう。

その誰かと過ごせる時間のしあわせと

その時間の終わりがいつか来ることのはじまりが

同時におこるのも出会いであって

また引き裂かれる。

それでもそこにたしかにある、今という時間のきらめきを
どうにかして抱きしめて過ごすしかない。

生きているうちに
出会えることの奇跡。

ただただそのことを考えている。

その細く確かで力強い光を前にして

性別などという概念をとりあげるのは
あまりにもたよりない。

誰かを美しいと思うことの美しさ。

生きていてよかったとおもうこと。



2月が終わる。

ひとり、何かを見て何かを考える時間が

いつも頬袋のように蓄えられている日々が

いつからかつづいていて

わたしはわたしを安心できている。